思い通りにいかない日常。痛みを抱えながらも何てことないそぶりで毎日を過ごす。コンビニの明かり、絡まるイヤホン、ポケットの中の「大丈夫」。レジ袋みたいに揺れる正しさの中で、不器用に踊り続ける。壊したいのは昨日の自分。零れた涙もレシートみたいに丸めて、この痛みさえジョークに変えてみよう、笑いながら夜を泳ぐ。8th Digital Single「キラーボール」は、そんな不器用で希望を捨てきれない人たちへの応援歌だ。
「キラーボール」というタイトルに込めた二重の意味とは?
自分の殻を壊す一投、という意味と、キラキラした嘘の二重の意味を込めています。「ボール」って言うと子どもっぽいし、何か優しいイメージがあるんですよ。でも「キラー」って付くと、それが一転して何か危険なものに変わる。その矛盾こそが、この曲の全体像だと思ったんです。
私たちって毎日、自分の中で「キラーボール」を投げてるんじゃないかって。昨日の自分を壊したいし、その一方で新しい自分も怖い。その両方が同時に存在する状態を、「キラーボール」という言葉で表現したかったんです。
コンビニやレジ袋など、日常のモチーフで描こうと思った理由は?
最も深刻な感情って、最も日常的な場所に宿っているんじゃないかって思ったんです。コンビニは夜の24時間営業。疲れた時、誰もが立ち寄る場所。そこの蛍光灯の下で、人って自分の心と向き合うんですよ。
レジ袋やレシート、イヤホンなんていうのは、本来なら捨てる対象ですよね。でもそれらって、その時の気持ちが一番凝縮されている。誰もが経験したことのある日常こそが、最もユニバーサルな表現になると思ったんです。高尚なことを歌わなくても、レシートを丸めるという仕草だけで、すべてが伝わる。
深刻なことを軽い言葉で歌うスタイルへのこだわりは?
人って、本当に苦しい時は冗談でごまかしちゃうんですよ。友人に「最近どう?」って聞かれて「まあまあ」とか「生きてます」とか答えちゃう。その時の自分が一番正直なんだと思うんです。だから、わざと軽い言葉で歌うことで、逆に本当の感情が浮かび上がってくると信じてるんです。
「この痛みさえジョークに変えてみよう」という歌詞があるんですけど、これは自分を傷つけてるわけじゃなくて、むしろ自分を守る知恵なんじゃないかって思うんです。笑うことで、その痛みと距離を置く。その時間が明日へのスタップになる。深刻に歌ってしまうと、聴き手も一緒に沈んでしまう。でも軽い言葉なら、一緒に前に進もうという気になる。
「壊したいのは昨日の自分」——この言葉の背景にあるものは?
成長ってそもそも痛いものじゃないですか。良くなりたいと思ってるのに、昨日の自分が邪魔をする。その葛藤を一番シンプルに表現したのがこの言葉なんです。昨日の自分を完全に壊すのって不可能だけど、少しずつ壊していく。その過程こそが生きることだと思ってるんです。
でもね、昨日の自分を壊したいと思うってことは、昨日の自分をちゃんと認識してるってことなんですよ。自分に真摯に向き合えてるってことなんです。そういう不器用さを持っている人に向けて、この曲を作りました。完璧じゃなくていい、前に進もうとしている限り、その人は素晴らしいんだって。
サウンド面でのこだわりを教えてください。
コンビニの蛍光灯の下という空間感を音で再現したかったんです。昼間のような明るさなのに、どこか不自然な空間ですよね。その不自然さを、デジタルと生音を混在させることで表現しました。
また、BPMは日常的なテンポにしました。走りすぎず、でも停滞もしない。足を引きずるようなテンポ感。「痛みながらも前に進む」という感覚を、リズムセクションで表現しました。サビに向かって少しずつ加速していくんですけど、その加速が「夜を泳ぐ」という感覚につながるんです。
不器用に生きている人たちへ、メッセージはありますか?
不器用であることは、実は最高の才能だと思うんです。完璧な人間は、誰のことも傷つけられないし、誰のことも救えない。でも不器用な人は、自分を傷つけながら、その痛みから何かを学ぶことができる。その学びは、必ず他の誰かを救う。
毎日が思い通りにいかなくても、コンビニで「大丈夫」って言いながら笑うことができる。その強さを持ってるんですよ。だからこの曲を聴く時は、自分のことを褒めてあげてください。今日も不器用に頑張った自分を。そして明日も、また新しい「昨日の自分」を壊す準備をしましょう。その繰り返しが、本当は一番美しい成長だと思うんです。