見渡せばこんなにも小さな幸せに囲まれている。他愛無い日常の中に感じる、完璧じゃないからこその愛おしさ。味付けが違っても、干し方が違っても、笑って受け止めてくれる人がいる。本に挟まった栞のように自然にそばにある幸せを思った爽やかな一曲「-P.a.n.o.r.a.m.a-」。
「パノラマ」というタイトルに込めた想いは?
視点を少し変えるだけで、世界は見え方が変わるんだと思うんです。同じ風景でも、視野を広げて見渡せば、そこに溢れている幸せに初めて気づく。パノラマって、そういう「見渡す」という行為そのものが象徴されている気がして。自分がどれほど愛に囲まれているのか、目を凝らしたら分かるという想いをタイトルに込めました。
曲の歌詞も、目の前の誰かの些細な行動——料理の味付けとか、洗濯物の干し方とか——そういった小さなディテールを見つめることで、実は深い愛情が隠れているという世界観を表現しています。
歌詞に実生活のディテールを多く散りばめた理由は?
人生で最も大切な瞬間って、実は日常の中にあると思うんです。特別な場所や大事件じゃなくて、毎日のように繰り返される些細な行動の中に。その「ある普通」を言語化したかった。料理の味付けが違うとか、洗濯物の干し方が違うとか——完璧じゃない試行錯誤の中に、実は一番の優しさが詰まっているんです。
そういう細部を歌詞に落とし込むことで、リスナーも自分の周りを見つめ直すきっかけになるといいなと思って。実は完璧な愛じゃなくて、不器用でもそばにいてくれる、笑って受け止めてくれる。その不完全さこそが本当の愛だと感じたから、歌詞にもその温度感を閉じ込めました。
「本に挟まった栞」の歌詞が特に美しいですが、どこから着想を?
本当に日常の何気ない瞬間から着想を得たんです。大切な人のそばにいるって、実は本に挟まった栞みたいなものじゃないかって思ったんです。存在してるのに気づかないくらい自然に、でも確実にそこにあって、その本を開く時には必ずそこにいる。大げさじゃないけど、すごく重要な役割を果たしている。
栞って、物質的には薄い一枚の紙に過ぎないんです。でも本を読む人にとっては、なくてはならない存在。大切な人との関係って、もしかしてそんな感じなのかもしれない。日常に溶け込んでいて、存在が自然すぎて気づきにくいけど、その人がいなくなった時にはじめて、その大切さが分かるような。そういう儚さと必然性が同時にある美しさを表現したかったんです。
日常の中にある幸せに気づく瞬間は、MinaWagaShi.にとっていつ訪れましたか?
毎日です、正直なところ。朝起きた時、好きな人のメッセージを見た時、お気に入りのカフェでコーヒーを飲んでいる時——そういった瞬間の積み重ねが、僕を支えていることに気づくんです。何か大きな出来事があるのを待っているのじゃなくて、もうすでに幸せは身の回りに溢れていて、それに気づけるかどうかだけなんだと思う。
この曲を作る過程でも、自分がどれほど多くの愛に囲まれているのか改めて感じたんです。歌詞の中に出てくるような、日常の細部を丁寧に見つめることで。だから今は、目の前の小さなことを逃さないようにしたい。その小さな幸せの集積こそが、人生を豊かにするんだと思うんです。
サウンド面で「爽やかさ」をどう表現しましたか?
日常の温かさと爽やかさを両立させたかった。題材は日常で、感情は優しくて包容力があるんですけど、サウンドには清涼感を入れたんです。朝日が当たる台所のような、明るくて心地よい空間を音で作るイメージでした。ストリングスの使い方にこだわって、息苦しくならないように、でも情感がちゃんと伝わるようにバランスを取りました。
ボーカルメロディーも、高音域を活かして透明感を出す一方で、低音部では温かみを保つという二層構造を意識しています。完璧な幸せじゃなくて、不器用だけど心地よい感じ。そういう矛盾した感情をサウンドで表現するのに時間をかけました。
この曲を聴く人に伝えたいことは?
毎日を過ごす中で、つい大きなことを求めがちなんだと思うんです。でも実は、目の前の誰かの小さな優しさ、毎日繰り返される何気ない行動の中に、一番の幸せって隠れているんじゃないかって。この曲を通じて、そのことに気づいてほしい。
完璧じゃなくていい。不器用でもいい。そばにいてくれて、笑って受け止めてくれる。その不完全さの中にこそ、本当の愛があるんだと感じてもらえたら。この曲が、そういう小さな幸せに気づくきっかけになれば幸いです。